VOICE magabon interview

No.102 中島哲也(映画監督)

映像化したい小説には、謎がある。登場人物の本質を知りたかったから、映画を撮りました。

累計195万部を突破し、2009年本屋大賞を受賞した大ベストセラー「告白」。「生徒に娘を殺された」という女教師・森口悠子の告白からはじまり、殺人事件に関わった登場人物たちの独白形式で構成される物語は、虚実が入り混じり、驚愕と戦慄の連続。大きな話題を集めた本作がついに映画化!
森口役は、舞台や映画で活躍し、高い演技力で支持を集める松たか子。また、熱血すぎるKYな新人教師役に岡田将生、殺人犯の過保護すぎる母親役に木村佳乃、そして、殺人犯の少年A・Bを含め、全国1000人以上のオーディションで選ばれた1年B組の生徒たち=37人の13歳が出演する。
そして、本作の監督と脚本を手がけるのは、独創的な映像感覚で「下妻物語」「嫌われ松子の一生」などの傑作を生み出してきた中島哲也。確かな演出力で知られる中島監督が、なぜ本作を撮ろうと思ったのか? その意図を探るべく、単独インタビューを敢行!

中島哲也

――原作と出会ったきっかけは?
「本屋さんですね。最初のページを読んでみたら面白かったので、そのまま買って最後まで読みました。夢も希望もない小説を読んだのは久しぶりでしたね。僕が若い頃はそういった小説はたくさんありましたけど、最近は救いのある話が多いじゃないですか。だから、原作者の湊かなえさんにすごく興味を持ちましたね。彼女は勇気があると思いました」

――読んだ段階から、どんな脚本にするか思い浮かべていましたか?
「いや、そんなことはないですね。ただ、森口悠子のことがすごく頭の中に残っていて、なんで残ったかというと、結局この人がどんな気持ちでいたのか全くの謎だったから。映画にしてみたら、彼女の気持ちが少しは分かるかなと思いました。実際には、森口という女性――それは松たか子さんという女優さんを通してですけど、細かいディティールまで分からないまま終わったかな。とはいえ、それが自分にとって悔しいということはなくて、人間はそう簡単に分かるもんじゃないなって改めて気付かされましたね。でも、クランクインした時から、最後は森口の顔で終わろうと決めていたので、あの顔が撮れた時、彼女と少し触れ合えた気がしました」

――原作は登場人物の告白によって章が構成されていますが、脚本に落とし込む際の苦労は?
「映像的に盛り上がるよう設定を変えるのは簡単にできるんですけど、それをやったら原作者に負けている気がして(笑)。ああえて原作通りにやる――そう決意を固めるまでに時間がかかりましたね。今回の課題として、映像化しづらいシチュエーションから逃げないと決めていたんです」

――中島監督が映像化したいと思わせる作品と、そうでない作品との違いは?
「謎があるということ。小説を読んだだけでその人間のことがはっきり理解できるなら、それをわざわざ映像にする必要はないと思う。『告白』は登場人物たちが、何を考えているのかさっぱり解らなくて。『私はこう』ってそれぞれの独白が続きますが、その言葉がどこまで本当なのか疑問なわけですよ。その人たちの本質やキモの部分を、実は湊さんは書いていない。書けないんじゃなくて、わざと読む人に色んな解釈ができるようにしている気がしたんですね。そこが、この原作に興味を抱いた最大の理由です」

――森口先生役に松さんを熱望されたそうですが、起用の理由を教えてください。
「彼女が出演した野田秀樹さんや蜷川幸雄さんの舞台を観た時に、すごい迫力があったんです。それも、泣き叫ぶとかそういうんじゃなくて、静かに立っているんだけど、目の中に非常に激しい感情を宿すという芝居ができる。その点に感動したんですよね。前もって松さんの底力を知っていましたから、絶対に森口役に合うと思ったし、松さんじゃなければ誰もこの役はできないと確信していました。もしも松さんが出演しないと言っていたら、映画化をやめていたかもしれません」



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