VOICE magabon interview

No.106 北野武(映画監督・俳優・お笑いタレント)

強烈な痛みと笑いは感情的に近いものがある。
これが北野映画の総集編と言われているけど、意外にストーリー性のある方が作りやすいんだよな。

日本が世界に誇る映画監督・北野武の最新作「アウトレイジ」が完成。本作は「座頭市」以来7年ぶりとなるバイオレンス・アクションで、椎名桔平、加瀬亮、三浦友和、石橋蓮司、北村総一朗など、北野映画初登場の豪華個性派俳優たちが集結。従来の寡黙な北野バイオレンスとは異なり、圧倒的な数の台詞が用意され、全く違うエンターテイメント作品に仕上がっている。
裏社会を舞台に、金と権力を手にするためだけに生きる“アウトレイジ=極悪非道”な男たちを描く本作。覇権争い、マネーゲーム、駆け引き、裏切り、使い捨て…欲望をむき出して生きる彼らの姿は、どこか滑稽で物悲しい。暴力でしか生きられない男たちの生き様は、現代社会が秘めている時代の暴力性すら垣間見える。
2010年最高の話題作の魅力を探るべく、北野監督に単独インタビューを敢行。彼が追求したバイオレンス・エンターテイメントの真髄とは?

北野武

――「TAKESHIS’」「監督・ばんざい!」「アキレスと亀」の三部作を経て、「座頭市」以来7年ぶりに、どうしてバイオレンス・アクション映画を撮ろうと思ったのでしょうか?
「食べ物と同じで、しばらくバイオレンスを食べてなかったから、そろそろ食いたくなってね。よくVシネやヤクザ映画を観るんだけど、自分なりの新しいヤクザ映画を撮ろうと思ったんだよね。あと、ヤクザ映画には暴力シーンがいっぱい出てくるから、そのパターンが同じにならないようにメモっていたんだけど、それがだいぶ溜まってね。その暴力シーンを使うためにストーリーを作ったら、わりかしうまい台本ができたので、久々にやろうかと。前に撮った『ソナチネ』も好きなんだけど、あれは映像美や個人的な世界観を伝える映画で、ストーリー性はあまりないんだよね。今回は完全に群像劇で、舞台を観ているような感じになりゃいいなって思ってね」

――そもそも、バイオレンスを題材に選ぶ理由は?
「とりあえず、死と直結しているところがある。まぁ、戦争映画を撮ればいいんだけど、戦争映画ってのは国やなんかの命令で、個人的な感情では動けないからね。例えば、人間を昆虫扱いしているんだけどさ、昆虫を上から虫眼鏡で見ると、普通に歩いているのはつまらなくて、喧嘩しているところが一番面白い。芋虫を蟻が攻撃しているとか、昆虫同士の闘いが好きで。ヤクザ映画はそれの人間版だと思うから」

――今回、北野映画常連の俳優を起用せずに、初参加者を揃えてキャスティングした理由は?
「これだけの面々の中に、従来の北野組の役者を入れちゃうと、違和感があるんだよね。やっぱり取り替えるなら全部取り替えないと、ちぐはぐな感じがしてよくない。だから、全員これまで組んでいない役者さんにしたんだよ。皆うまいこと役柄がぴったり当てはまっていて、個人個人でよくやってもらったよ」

――各俳優には具体的にどんな演出をして、“全員悪人”にしたのでしょうか?
「まぁ、この人たちはキャリアを積んでいるから、台本を見せてもあまり質問してこないし、こっちもこうしてくれって言わなくても、1回だけリハーサルをやったらほとんどできていたね。問題は立ち位置くらいで、『カメラマンがここにいるからもうちょっとずれてください』と言う程度で、表情や演技の指示はほとんどしなかった。加瀬さんはサングラスとオールバックと眉毛の感じが良くてね、『キレたら怖いヤクザになってくれ』って言っただけ。初めは戸惑っていたけど、終わる頃には一番悪くなっていたからね(笑)。見事にやってくれた感じだな。あと、北村さんと三浦さんも見事にうまくいったよ。お互い遠慮するかと思ったけど、北村さんが本番で三浦さんを殴るシーンでは、三浦さんもすごい良い表情を出してくれたから、うまいこといった。ああいう人たちがイメージと違う役をやるのはインパクト強いよな」

――誰が主役で、誰が生き残るのかわからず、予想外の展開が面白かったです。
「俺が主役の映画は大体“匂い”が決まっちゃうんで、なるだけ匂わないように下がったんだけど、撮りだしたらあまりに下がりすぎちゃって、もう少し俺のシーン増やそうかと。それでバランスがとれて、全員が同じような印象となっていると思うから、ちょうど良かったかな」



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