VOICE magabon interview

No.143 吹石一恵(女優)&宮藤官九郎(脚本家・映画監督・演出家・俳優)

後からじわじわボディブローのように染みてくる映画です(吹石)
二人は確かに貧乏なんだけど、この貧乏だったらいやじゃないって思わせるものがあります(宮藤)

代表作「ゲゲゲの鬼太郎」で知られる妖怪漫画の巨匠、水木しげる。2010年に画業60周年を迎えることを記念して、日本各地で展覧会やイベントが開催。故郷である鳥取県境港市の水木しげるロードでは「妖怪シンポジウム」などが開かれ、観光客数が初めて年間200万人を超えたことでも話題になっている。
さらに、彼の半生を妻・布枝の目線で語るNHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」(出演:松下奈緒、向井理)は、貧しくもあたたかな夫婦生活が幅広い世代の心を掴み、最高視聴率20%を突破。2010年はまさに “水木しげるイヤー”と言っても過言ではない。そして、その締めくくりを飾るに相応しい、映画版「ゲゲゲの女房」がいよいよ公開される。
原作は、布枝が書き下ろした自伝エッセイ。映画では、お見合いからたった5日後に結婚したところから始まり、ぎこちなく始まった二人きりの生活から“夫婦”になるまでの歩みを丁寧に紡ぎ上げる。
布枝役には、「THE LAST MESSAGE 海猿」(10)、「十三人の刺客」(10)など話題作への出演が相次ぐ女優の吹石一恵。また、茂役には、舞台、映画、ドラマで脚本家、演出家としても活躍し続けている宮藤官九郎。二人の対談インタビューを敢行し、本作にかける想いを聞いた。

吹石一恵&宮藤官九郎

――本作の撮影前に、原作は読みましたか?
吹石(以下F)「はい。水木先生のことはもちろん存じ上げていましたけれど、『どんなご家族がいるんだろう』というところまで思いを馳せたことがなかったので、興味深く読ませていただきました。こういう奥様とともに人生を歩んでこられたこととか、最初から売れっ子漫画家ではなくて不遇の時代があったとか、水木先生の作品は子どもの頃から好きだったんですけど、プライベートのことは知らなかったから、すごく面白かったです」
宮藤(以下K)「僕は読んでないんです。イメージが掴めていなくて、監督に『(水木先生役は)どうして僕なんですか?』というのをまず聞いたら、『街で偶然僕を見かけた時の佇まいや後ろ姿が、水木さんと通じるものがあった』と言われて。確かに普通の仕事している人とは違うものがあるのかもしれませんね。だから、僕が水木先生を演じるのは、お芝居をする感覚じゃなくて、現場に行って一生懸命漫画を描いている姿を撮ってもらうのが一番だと思いました」

――水木さんご本人と劇中の宮藤さんは外見も似てらっしゃいますよね。
K「自転車の写真(お見合い前に布枝に渡されたもの)とすごく似ているんですよね。似せようとは思っていなかったけど、意外と似ていたみたいで(笑)」
F「そうですね。あの写真はだいぶ雰囲気が出ていましたよね」
K「多分、監督のこだわりだったと思うんですけど、水木先生自身の人物像をあまりガツガツした人にはしたくなかったんじゃないですか。それが自分にとっては楽だったんですよね。あ、そのまんまでいいんだって。『俺の漫画はいつか認められるんだ!』みたいな気合いが入ったキャラは無理だと思ったので。むしろ、僕は淡々と好きな作品を描いていればいいだけで、『お米がもうない』とか一つ一つの出来事にちゃんと反応しなきゃいけない吹石さんの方が大変だったと思います」
F「今の自分とかけ離れていることがとても多かったので、現場で布枝さんにしていただいた、という感じですね。監督の演出はもちろん、宮藤さんがいたことがとても救われました」

――夫婦を築きあげていくうえで、お互いに心がけた点は?
K「大それたことはしてないですけど、漫画の描き方を教わりに水木先生の事務所に行ったら奥様もいらしたんですよ。その時に、『水木はすごく誠実に漫画を描いていたので、そこに私は惹かれてずっと一緒にいた』と聞いて、お二人の距離感が分かった気がしました」
F「宮藤さんとは今回の撮影で初めてお会いしたので、水木先生と布枝さんの関係に近かったかも。撮影もほとんどストーリー通りに行われていましたし、この空気がそのまま作品に反映されればと思っていました」

――完成作を、水木夫妻と一緒にご覧になったと聞きました。
F「布枝さんが両手で私の手を握って、『ありがとうございました』と言ってくださいました。鑑賞後の感想やお顔を見るのがすごく怖かったんですけど、お二人とも楽しんでいただけたようで、それで気持ちが楽になれました。『あぁ、これでよかったんだ!』って、大変だった撮影もすべて報われた思いでした」



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