
1987年に刊行された村上春樹の小説「ノルウェイの森」。累計発行部数1079万部(単行本・文庫本合計)を突破し、日本の国内小説累計発行部数歴代1位の記録を更新中。また国内のみならず、36言語に翻訳されている世界的ベストセラーが、遂に映画化。
自殺した親友の恋人だった直子と、大学の同級生・緑との間で揺れ動く主人公・ワタナベの青春のもがきを描いた究極の恋愛物語。愛と性、生と死など、人間の葛藤や喪失感、生きることの強さを表現し、その“村上春樹ワールド”とも言うべき独創的な世界観から、映像化は不可能とされてきた。
そんな中、映像化を実現したのは、ベトナム系フランス人監督のトラン・アン・ユン監督。「青いパパイヤの香り」(93)「夏至」(00)など、叙情性あふれる映像美に定評があり、原作者の村上春樹自身、トラン監督に魅了されていた一人だったという。
主演のワタナベ役には「デスノート」(06)「GANTZ」(11)など、話題作への出演が相次ぐ松山ケンイチ。直子役には「バベル」(06)など国際派女優として知られる菊地凜子、緑役には、女性誌のモデルとして活躍する水原希子が抜擢され、演技に初挑戦。それぞれ、難役とも思える複雑な人間性を、見事に表現している。
そこで、松山ケンイチにインタビューを敢行! 本作への思い入れを語ってもらった。

――完成披露会見では、作品の出来を完璧と語っていましたね。
「完璧だなと思うのは、この映画に品性があるということ。下劣でも、生々しくもなく、品があって。とてもきれいなものを見ているような感覚があるんです。それは個人的な芝居で作り上げることはできなくて、トラン監督が本当に、一人ひとりのキャラクター造詣や絵の切り取り方を大事にしていた。1シーンや2シーンに1日かけて、じっくりと芝居ができたこともあって、クオリティの高いものになっているので、僕は満足しています」
――これまでに原作を読んだことは?
「すごく有名だとは分かっていたんですけど、読んだことはなかったんです。オーディションのときに初めて読んで、最初はすごく生々しい性描写だな、とかそういうとこばかりに焦点があっちゃって。大事な部分を読み取れなったんですね。例えば、ワタナベとレイコさんのセックスの意味は全く分からなかった。でも今回、ワタナベを追体験する中で、それは二人が死を受け入れながら前に進んでいく、生きていくためのものだったんだなって分かった。原作の持つ意味がものすごく深いことに気づいたんです」
――本作が多くの人を惹き付ける理由、またご自身が影響を受けたことはありますか?
「愛や生と死、それは全世界の生きている人だったらみんなが感じること。すごく普遍的なことを扱った作品だから、世界中で支持されているんだと思います。僕は今25歳で、ワタナベは大学生ですけど、少年から大人の間の話で、最後にひとつ大人になったかな? という話。それは、やっぱり気づいたからだと思うんですよね。直子を精一杯愛しても、人を救うことは簡単にできない。自分の身の程に気づくとか、そういう気づきがワタナベを大人にさせている。そして、僕もワタナベ同様、直子と緑との大恋愛を通してひとつ大人になっていったような気がしています」
――激しくも美しい、トラン監督ならではの圧倒的な映像美も見どころです。
「砥峰高原はすごかったですね。冬と夏、同じところに行ったんですけど。特にヒキの映像では、ふたりが草原をポツンと歩いているとか、雪の中をズボズボ歩いているとか。ワタナベや直子の心を表現していると感じます」
――他に印象的だったシーンは?
「ハツミさんとのシーンです。ご飯を食べているときに、『ワタナベくん、どういうこと?』って言われるシーン。あそこは何回観ても、僕、怒られているんですよね(笑)。なんであんなに重い空気出せるのかなって。演じる初音(映莉子)さんに圧倒されちゃって、僕は何回も噛んじゃったんですよ。だから監督に言われました。『魚も泳げないときがあるんだな』って(笑)。」
――ワタナベが直子と緑の正反対とも思える二人の女性に惹かれた理由をどう思いますか?
「直子は同じ傷をもっている相手。直子が死に引っ張られていってしまうのを、二人でどうにかして止めて、一緒に支えあって生きていきたいと思っている。ここで復活したいと思っているんですね。でも具体的な方法は見つからない。そこで、具体的な方法を持っているのが緑。ワタナベにとって生きる方向に導いてくれるのは、緑の存在。だから二人を愛してしまうのは、ワタナベが緑のようになって、直子を救いたいという気持ちもあるし、自分も救われたいと思っているからなんですね」
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