VOICE magabon interview

No.200 渡辺謙(俳優)

日本で育ててもらった俳優としては
日本のお客様に何かを返していく必要があるんじゃないかな

渡辺謙が、ジョン・キューザック、コン・リー、チョウ・ユンファ、菊地凛子らと共演した歴史サスペンス映画「シャンハイ」が公開される。アメリカ、中国、日本を代表する名優たちが挑んだ本作の舞台は、1941年の太平洋戦争前夜の上海。列強国の駆け引きや陰謀が渦巻く激動の時代に、宿命的に出会った男女のロマンスが燃え上がる。そんな本作で、冷酷な日本人将校タナカ役を演じた渡辺謙にインタビュー!
主人公の米諜報部員ポール役にジョン・キューザック。彼が諜報部員の同僚の死の真相を探っていくうちに、裏社会のドンの妻アンナ(コン・リー)に心を奪われていく。タナカは、そんなポールを執拗に付け狙う。本作は、ポールとアンナの運命的な恋だけではなく、何層もの悲恋が散りばめられた重厚な人間ドラマとなっている。
豪華な布陣をまとめ上げ、本作のメガホンをとったのは「ザ・ライト -エクソシストの真実-」のミカエル・ハフストローム監督。舞台は上海なのに、主要シーンはロンドンやタイという異国に“魔都”上海のセットが作られたというのも興味深い。そこで渡辺謙に、各国のスターたちと共演したエピソードや、映画スターとしての今の立ち位置について聞いてみた。

渡辺謙

――数あるオファーの中から、本作の出演を決めたきっかけから聞かせてください。
「当時、『明日の記憶』と、『硫黄島からの手紙』という映画が僕の中で大きな比重を占めていて、『明日の記憶』はプロデュースしたということもあり、プロモーションもかなり精力的にさせてもらったんです。『硫黄島からの手紙』も日本の歴史の中では重い部分を描く映画だったので、それらをがーっとやっていくうちに、ある種燃え尽きたみたいになって。一年半映画製作には関わってなかった。そろそろ何かやらなきゃっていうモチベーションが起き始めた頃、『シルク・ド・フリーク』 と『シャンハイ』という映画を2本ぽんぽんってもらったんです。『明日の記憶』と『硫黄島からの手紙』は大義や信念など、人間の骨太な部分を描く作品だったけど、『シルク・ド・フリーク』はパーッとした作品(ホラーファンタジー)だし、『シャンハイ』も戦争という大きなフレームがありながら、すごくパーソナルな人間の愛憎みたいなものを最終的には描く話だったので、非常に魅力を感じました。また、違う一歩として踏み出してみようという時にすごくいい2作品でした」

――国際色豊かな現場の雰囲気はどんな感じでしたか?
「国際色っていう意味では、クリストファー・ノーラン(『バットマン ビギンズ』『インセプション』の監督)だってイギリス人だし、『SAYURI』の現場もそうだったし。ただ、今までは僕が欧米人の中に飛び込んでいくという作品でしたが、今回はアジア人の中に欧米人が飛び込んできたって感じはありました。ぱっと隣を見ると同胞だって感じでした」

――コン・リーさんとは『SAYURI』以来の共演でしたね。
「リーとは『SAYURI』で半年間くらい一緒でしたね。彼女が役に入っていく時の怖がる感じがとても好きですね。すごくビクビクするというか、あんなに映画をやっているにも関わらず、いまだにすごく繊細さを持っていて。そういう意味で尊敬できるし、ある意味、可愛らしいです」

――Newsweek日本版で、「出演依頼されるのは、半分以上が好きになれない役柄」と話されていますが、今作の役柄は好きになれましたか?
「全然シンパシーが湧かなかったです。僕はこんなに去っていく人を追いかけるタイプじゃない。ただ、彼はすごく理性的で論理的に人生をかっちり生きてきた男で、どこか違うところに自分を脱出させたいと思っている。そういう部分で女性を捉えていたんじゃないかと思ったんです。だから非常にロマンティックな台詞を語るし、女性の元へ行きたいけど、今の自分の立場や抱えているものがそれを許さない。そういうジレンマみたいなものが彼を支配してると思った時には、ちょっとシンパシーが湧きました」

――共感できない役柄には、どんなふうにアプローチしていくのですか?
「彼の立脚点というか、もしかしてそういうことなのかもしれないというイメージができると、それに向かって積み上げていくことができるんです。演じる時、迷いがないわけじゃないけど、特にタナカ役の場合は最後に非常にパーソナルな部分が出てくるので、そこに至るまでどうやって謎を残していくのか、見せないでおくのかってことは監督と話しました。あまりにも見せないでおくと、ただ、残酷で冷酷なヤツとしか思わないので、小さなかぎ針みたいにチクリともしないような針を、お客さんのどこかに引っ掛けていくことを各シーンでやりたいと思いました。だから目線や台詞のトーンで、『何なのだろう、この人は?』っていうふうに引っ張っていけるようにはしたかったです」



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