VOICE magabon interview

No.200 渡辺謙(俳優)

渡辺謙

――主人公・ポールが情熱的な恋に落ちるのは、上海という場所だったからこそ?
「僕はすごくそう思いました。女性を追いかけてるというよりも、自分の中にある女性観を追いかけてる、そんな感じがしました。ポールもふらっと女性の元へ行ってしまうけど、ただの政治的な理由かといえばそうではなくて、何か切ない傷を舐め合っているような逢瀬だったりするんです。その辺の揺らぎをすごく不安な空気の中で、みんなが持っていた気がしました。街が持っているエロスですね」

――「女性が最後に勝つ」という台詞も印象的でした。
「僕もそう思います(笑)。やっぱり女性の方が、自分の信念に立ち向かっていくわけで。男って最終的には本当に弱い生き物なんですよ。だから、争ったら絶対に勝てないんです。概念にしても生命力にしても、絶対勝てない気がします。まあ、ケンカをしない、ってことですかね(笑)」

――渡辺さんにとって、作品選びの基準はどんな点にありますか?
「結局、僕らって生ものだから、作品で燃え尽きちゃうとその後しばらく何もできなかったりするんです。近々の話で言えば、3月にロスから帰ってきた日に震災が起きて、こういう社会情勢になったりすると、もう俺、今は日本を離れがたいなって気がしちゃうんです。やはり日本で育ててもらった俳優としては、日本のお客様に何かを返していく必要があるんじゃないかなって。単純にいい作品があるからとか、ただ面白い可能性があるからってだけじゃなくて、今、自分に何を求められているのか、何をやるべきなのか、っていう大きな社会情勢を含めて考えていくべきだろうと思っています」

――確かに、映画は社会情勢によって、公開自体が左右されますね。
「映画っていつも思うんだけど、企画している時、撮っている時、公開する時って状況を選べないわけです。『沈まぬ太陽』を企画した時、世の中が上向きだったから、人が左遷されて我慢する話ってどう受け止められるのか心配していたら、リーマンショックが起きて、社会や仕事の見方が変わってしまった。これは今見る作品だって思ってもらえた。やっぱり作品が持っている運とか不運とかってあるんです。それを僕らは選べない。だからこそ、自分が今求められてることに忠実に応えていくしかないような気がするんです。それを実践しているのが僕はクリント(・イーストウッド)だと思う。『ヒア アフター』については、津波のシーンがあったから残念な結果になったけど、ある意味、命のあり方を問う作品としては絶妙なタイミングだったと思う。『ミスティック・リバー』から始まって、なぜか彼の最近の作品は時代に合っている。それは彼がそういうものを感じ取る力があって、今やるべきことをやっていってるってことかなと」

――渡辺さんにとって、イーストウッドは特別な存在ですか?
「ものすごい遠い目標で、見上げている感じではあります」

――渡辺さんも、イーストウッドのようにいつか監督業にチャレンジしたいと思われますか?
「クリントと仕事をした時、一瞬俺にもできるのかと血迷いました(笑)。でも、クリントはもう40年近く監督をしてるんです。もちろん、認められた作品もあれば、認められなかった作品もいっぱいあるんだけど、それだけのスタッフを培ってきている。長い人は50年くらい一緒に仕事をしているし、メインのクルーだって30年以上は一緒にやってる。そういう支えがあって、ああいう形でできていく。僕は今まだ監督ってどういうものなのかもよく分かってない。でも、もし自分の身を削ってでもやるべきだという作品と巡り会えたら、やる価値はあるとは思っています。でも、『はやぶさ 遥かなる帰還』もそうですが、プロデューサーに近い仕事は、みんなの気持ちをひとつにして、この作品のために何かを捧げていくような空気や雰囲気、体制を整えていくことには、(労力を)惜しまないと思います。映画が良くなることなら、掛け値なしでやりたいです」

――そういうふうに思い出したのはいつ頃ですか?
「少しずつ窓を開いて、外国で仕事をするようになり、いろんな才能の人たちと仕事ができたってこと。それと『明日の記憶』をプロデュースしたことが大きかったです。クリントと会った時、映画の作り方や想いみたいなものが同じかもしれないなってちょっと思えたんです。そういう意味ではすごく自信になりました。オーバーに伝えなくても、ちゃんと伝えたいって想いがあればいいってことをクリントと仕事して確認させてもらえたんです。一方的にね(笑)」

Text:Nobuko Yamazaki
Photo:Megumi Nakaoka

<衣装協力店>PAL ZILERI

シャンハイ
(C)2009 TWC Asian Film Fund, LLC. All rights reserved.

シャンハイ
2011年8月20日(土)より
丸の内ピカデリー他全国ロードショー



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