VOICE magabon interview

No.211 瑛太(俳優)

何かあった時、命を懸けられるものは、もちろん家族

思わず目を背けたくなるほど、痛々しい瑛太の切腹シーン。三池崇史監督が、市川海老蔵と瑛太を迎えて放つ時代劇映画「一命」での1シーンである。本作は、1962年に仲代達矢主演作「切腹」として映画化された、滝口康彦の時代小説「異聞浪人記」を、3D映像で、そして新たなアプローチで再映画化した意欲作だ。
生活に困窮した浪人が溢れる江戸時代初頭、浪人の津雲半四郎(市川海老蔵)が、名門・井伊家に出向き、切腹を申し出る。井伊家の家老・斎藤勘解由(役所広司)は、先日、同じように切腹が目的で屋敷を訪れた千々岩求女(瑛太)について彼に尋ねるが、そこで半四郎は、驚くべき真実を語り始める。
江戸時代に、命を懸けて家族を守ろうとした2人の浪人の生き様を通して、武家社会の虚飾への痛烈な皮肉を浮き彫りにした。市川海老蔵、瑛太、役所広司、満島ひかりら豪華な布陣で放つ本作は、第64回カンヌ国際映画祭でも上映され、喝采を浴びた。
そこで、見事な切腹シーンで、切ない武士の生き様を体現した瑛太に直撃インタビュー!初の三池組についての感想から、市川海老蔵との撮影秘話まで語ってもらった。

瑛太

――まずは、脚本を読んだ時の感想から聞かせてください。
「台本をいただく前に、監督が三池さん、共演が海老蔵さん、役所さん、満島さんというとても素敵なみなさんと聞いて、そこで惹かれる部分がすごくありました。また、以前に『切腹』を観ていて、なんとなく内容は分かっていたので、『一命』という映画がどういう映画になるのか、想像しながら読み進めました。そうしたらすごく引きこまれていきました」

――役作りをする際、いつも原作をご覧になりますか?
「原作はいつも気にはなります。今回は読みましたが、ケースバイケースですね。プロデューサーや監督に聞いて、読んだほうが良いということであれば読みます。読んでやる良さもあるし、読まないでやる良さもある。原作を読むと、そのイメージが頭に残るから、それがベースになって上手く作用する場合もあるし、それをそのままなぞってしまう時もあるので。ただ、どちらにしても、悪い作用はないとは思います」

――役作りでかなり減量されたそうですね。
「約8kgを2~3週間くらいで落としました。 この作品の前に太る役をやっていたので、全身だぶついていて、運動も全然してなくて。『最近、海老蔵さんや満島さんもだんだん痩せてきたよ』って、周りからプレッシャーをかけられながら、これはやらなきゃいけないと思いました。減量する時、一番苦がなく減量できるのが、炭水化物を摂らずに野菜と鶏肉しか食べず、ランニングで汗をかくという方法なんですが、京都で撮影していて、美味しいごはん屋さんの色々な噂が入ってきて。でも、海老蔵さんも現場でゆでたまごを食べていたり、すごくいい塩があると言って、塩を舐めさせてくれたり、僕に野菜丼を買ってきてくれたりして。本当にいい方ですよ。自分だけじゃなく家族3人でやっていた感じがしました」

――切腹のシーンで、やり方や立ち位置について、三池監督にいくつか提案をされたそうですが。
「最初に、基本的な切腹の所作などが入ったDVDを渡されて、それを見て考えてほしいと言われました。切腹シーンのト書きで『血迷った』という言葉があったので、求女が血迷った状態をどういうふうに出せばいいのか、自分なりに感じたことを監督に話しました。それで『白い畳の上から飛び出していきたい』って言ったら、『それ、いいんじゃないか』と言ってくださって。着物も本当は思い切り上半身を脱ぐのは作法として良くないけれど、いろんな葛藤があり、もしあの場に立たされたらそれどころじゃないと思ったんです。監督も『最終的には感情でいってほしい』と言ってくださって。時代劇らしい伝統や歴史をしっかり解釈した上で演じることも大切だけど、それ以上に、今の時代を生きている僕がいて、僕なりの解釈で演じてみたいという気持ちがありました」

――痛みもすごく伝わってきましたが、演じる上で難しくはなかったですか?
「あのシーンにおいて伝えたいことは、ただの痛みだけじゃいけないと思っていました。でも、実際完成した映画を観て、『これは痛みしか伝わらないんじゃないか』と思った時、もっと葛藤みたいなものを出せたら良かったという反省点も出てきました。あの時は本当に、求女同様、ちょっと混乱していたなあと。血迷った状態で、客観性みたいなものが失われていましたから」



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