VOICE magabon interview

No.268 堺雅人(俳優)&香川照之(俳優)&広末涼子(女優)

堺雅人&香川照之&広末涼子

――堺さんと香川さんは、他人の人生を生きるという難役に挑戦されましたが、役作りで工夫した点は?
S「特にしてないです。内田監督の指示は的確で、言われたことをやっておけば、絶対に面白いものができるという信頼感があるから。僕は『アフタースクール』に続いて2本目だったので、本作はノープランでいきました。だから、今回気をつけたのは、遅刻をしないってことだけで(笑)。脚本がよく練られているので、言われたとおりやっていけばいいんです。ここまで楽な現場はそうないですよ」
K「僕はすごい怖がりなので、いつも台本をガチガチに全部覚えるんです。それをいつも以上にやって、全部把握しておこうとしました。とはいえ、内田監督は4年間も掛けて台本を書いてるんですから、俳優が太刀打ちできるわけがないんです」

――どんな時に「太刀打ちできない」って感じましたか?
K「脚本を読んで、役者が見逃してしまいそうな点を、内田監督は指摘されるんです。たとえば、誰を見て台詞を語るのかってことや、『そこを強く言ってください』と、台詞の強弱についても言われます。それはもう上から捉えている神様の視点ですね。台本に強弱までは書いてないけど、本来きちんと読めていれば、強く言うところとして浮かび上がってないといけない箇所だったんです。そこまで準備して初めて“台本を読み込めている”ってことなんだと、久しぶりに思いました。自分で読めているかなって思っていたら、違っていたり緻密な脚本だと、そういうことが起こるんです」

――広末さん演じる香苗役は、真面目ゆえにズレた感覚を持つ女性で、役作りに苦労されたのでは?
H「現場では、内田監督のイメージがしっかりできていて、そこに答えていくだけだったので、努力するというほどのことはしていないかもしれません。ただ、今回気を付けたのは、笑わないことです。感情を表情に出し過ぎないこと。たぶん今までの自分のお芝居の作り方は、喜怒哀楽を出す作業だったのですが、今回はそれを封印しました。でも、お二人のお芝居を見ていたら、笑いそうになってしまって。なるべく視界に入っていても意識に入れないようにしていました」
S「広末さん、苦労されたと思いますよ。可愛いからNGってことが何回かありました(笑)」
K「香苗は特に偏ったところだけフォーカスが当たっている女性ですから。広末さんみたいにしっかりした女優さんは、全てに対してアンテナを張り、反応していくという力が自然とついてるんです。でも今回は、偏ったところだけを見せるってことで、演技の型を変えられたって感じだったのかな。それが新鮮でした」
H「自分でも今までにないお芝居を、内田監督から引き出していただいたと思います」
S「確かに広末さんは優しいし、気がつくから、人のお芝居に全部反応してくださるんです。それは普段、役者としてはありがたいことだけど、今回は全く気が利かない人としていてくださいってことだったから、難しかったでしょうね」

――内田監督の演出はどういうものですか?
S「具体的なんです。走ってやってきて、ここに座ってふーふーって息をついて、この人とこの人を気にしながらこれをしてくださいって感じで。それをやるためにどうしたらいいのかってことじゃなく、言われたことをやればいいってことなんです。こんなに葛藤がない現場も珍しいですね。死ぬまであと1回か2回あるかないかじゃないでしょうか? 内田監督の現場は特別というか、もし『次やる?』って言われたら、何でもやります。明日からでも行きたいくらいです」

――広末さんは、内田監督の演出をどう思いましたか?
H「確かに、監督の演出は的確ですね。演じる役柄の性格を表そうとすると、自分のことばかりを気にしてしまうけど、監督に言われた動きをすることで、相手の気持ちも見えてくるんです。『悲しい』とか『大きく』といった形容詞ではなく、動きを具体的に説明してくださる。それをすると、役になれるというか、感情表現も自然に出てくる感じです」
K「でも、それだと弱いんじゃないか?って恐れが俳優にはあるんです。中の感情が詰まってないと、ダメなんじゃないかと思いがちですが、それで良くて。そのやり方って、内田さんの台本でしか成立しないのか、他でも通用するのかがまだ分からないです」
S「そのやり方で次の作品もやったら、大火傷じゃない?」
K「絶対に火傷です(笑)。ある種、キャリアがないと、太刀打ちできないスタイルなのかもしれない。内田さんはそれを含めてキャスティングをされているんじゃないでしょうか。内田さんの中に、いろいろな計算があるんでしょうね。改めてスゴいと思います!」

Text : Nobuko Yamazaki

堺 雅人
Styling :Katsushi Tochi /Hair & Make-up : Kazumi Yasuda(SHIMA)
香川照之
Styling : Miyuki Tashiro(STUDIO QUE)/Hair & Make-up : Ryuji Nakashima(HAPP'S.)
広末涼子
Styling : Machiko Hirano(NOMA)/Hair & Make-up : Tamae Okano(STORM)

鍵泥棒のメソッド
(C) 2012「鍵泥棒のメソッド」製作委員会

鍵泥棒のメソッド
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