VOICE magabon interview

No.269 岩井俊二(映画監督・映像作家・脚本家・音楽家)

岩井俊二

――本作で一番伝えたかったことは?
「表現したかったのは、極めてレアな人間同士の関係性です。何かを言いたかったというよりは、実際こういうことがありえるかもしれないという人と人との関係性。この物語の設定だと、おそらく誰も見ることができないものだから。なぜなら、片方はその場で死んでしまうし、もう片方は犯罪者でいなくなってしまうから。僕は、そこで生まれる人間関係を描きたかったんです」

――サイモンが「血は命そのものなんだ」という台詞が印象的でした。
「物語を追っていく中で、自分の中の死生観や、ちょっと科学オタク的な側面が端々に出たと思います。小説もありますが、それは主人公のモノローグで展開するから、サイモンが普段何を考えているのかってこともふんだんに出てきます。その半分くらいは僕自身が常日頃思っていることだけど、半分は変質者目線で書かなければいけなかったので、自分が変質者になりきった感じで書きました。でも、時々そこが自分と混ざるというか、ちょっと危険な状態の時もありました(笑)」

――本作で、脚本・監督・音楽・撮影・編集・プロデュースと一人6役こなすというこだわりについて聞かせてください。
「僕のアプローチの仕方って、学生時代から変わってないんです。学生の時から、自分で台本を書いて自分でプロデュースし、友達に声をかけて手伝ってもらっていました。やれる限りのことを自分でやるってことは自然な流れなんです。そのスタイルは今でもあまり変わってなくて、その結果1人で何役もすることになる。ある種の自主映画なんです。こういう作り方も楽しいですが、もちろん、コラボレーションでいく楽しみ方もあります。そういう場合は、プロデューサーとしてやります」

――多くの岩井監督ファンは、もっと長編をたくさん監督してほしいと願っているのでは?
「監督作と名乗っていないだけで、現場で監督に近いことをやっている作品も多いんですよ。ただ、僕としては一応、自分がちゃんと書いた台本を自分が全て監督する時だけ、監督って名前を出しています。たとえば、ある原作をある脚本家が書いて、それをバトンタッチして監督するってこともありますし。実は、脚本家としての役割が一番参加しやすいので、現場は他の監督さんにお願いして、仕上げだけ関わったりすることもあります」

――北川悦吏子さんの監督作は、「ハルフウェイ」に続き、新作「新しい靴を買わなくちゃ」もプロデュースされました。
「北川さんの場合は、一緒に現場に付いていってサポートしたりして、助監督みたいなこともやってます。ただ、自分は物語作りに中心を置いているので、それをちゃんとできたご褒美として、現場で監督をやって、監督作にするって考え方です。だからみんなで作った作品なのに“岩井俊二監督作”って付けちゃうのはどうかなと。もちろん、みんなで作る方が楽なんです。でも、それをやっていると、一人で悶々と考える長くてきつい時間がだんだん嫌になってきて、新しいものを作れなくなってしまいそうで。自分の戒めとして、これだけは自分で監督するって作品を分けています。古い映画のリメイクってなると、また話は別でしょうけど、同時代、同じ空間で、他の人が考えたものを転用して自分の作品にはできないなって思っています」

――もしも編集長をするなら、どんな雑誌が作りたいですか?
「いろんなものに好奇心があるので、自分のあらゆる好奇心を満たしてくれるような雑誌がいいです。自分でやってる『岩井俊二映画祭』というサイトも、そういう傾向がありますね。昔、伊丹十三さんが映画監督になられる前に、『mon oncle(モノンクル)』という極めて趣味的な雑誌の編集長をされていて、楽しみに見ていました。ああいう雑誌ができたらいいですね」

Text : Nobuko Yamazaki
Photo : Isao Hishinuma

ヴァンパイア
VAMPIRE (C) 2011 Rockwell Eyes, Inc. All Rights Reserved.

ヴァンパイア
2012年9月15日(土)より
シネマライズ他全国順次ロードショー



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